更新日:2018.07.02
執 筆:整体師 荒木晶子
橋本病はバセドウ病とは逆に、甲状腺の機能が低下する代表的な病気です。
女性が男性の20倍ほど多く、かつては40歳以上に多いとされてきましたが、最近は若い女性に多いことが分かってきました。
1912年に九州大学の橋本先生によって発表されました。
甲状腺ホルモンの欠乏により代謝が悪くなり、心身の働き、エネルギーが低下した状態、副交感神経が亢進している状態になります。
橋本病は「首の腫れ」「だるさ」「無気力」などが特徴です。
甲状腺はバセドウ病同様、部分的なしこりではなく全体が腫れますが、バセドウ病に比べ表面に凹凸ができたり、硬くなったりしやすいといわれています。
腫れは大小様々で、左葉、右葉のどちらかだけが腫れることもありますが、じわじわと進行するため自覚症状が感じられないこともあります。
その他にも、
などが見られます。
以上のような症状から、うつ病や更年期障害と診断され、間違った治療を受けている場合もあります。
本病は甲状腺が腫れていても痛みは出ませんが、まれに急に腫れて発熱や痛みが出る場合があります。
これは橋本病の急性憎悪という治りにくい状態です。
急な症状が出たらなるべく早く受診する必要があります。
また、橋本病の女性は産後、バセドウ病のような動悸や息切れなどの症状が一時的に起きることがありますが、これは「一過性甲状腺中毒(無痛性甲状腺炎)」といい、数週間で自然に回復することが多いので治療の必要はありません。
原因ははっきり解明されていませんが、バセドウ病同様に自己免疫疾患と考えられています。
バセドウ病では、甲状腺が自己抗体により刺激され機能が亢進しますが、橋本病は自己抗体からの刺激・攻撃により組織が破壊され機能が低下し、甲状腺ホルモンが十分に産生できなくなることにより症状が現れます。
いずれも同じ仕組みで発症しますが、機能は相反する方向に偏ります。
甲状腺機能が低下して不足した甲状腺ホルモンを「甲状腺ホルモン剤」を服用することにより補充して治療します。
ホルモン剤を服用することで、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンはストップし、刺激も緩和されます。
すると、腫れは引き、橋本病の特徴である寒気やだるさや無気力などの症状も治まっていきます。
甲状腺ホルモンが不足する状態には個人差があるため、薬の量は慎重に決めることが大切になります。
薬が足りなくても効果が出にくく、多過ぎても機能亢進状態になってしまい、動悸や息切れなど症状が出てしまうので注意が必要です。
また、薬は良く効きますが、病気が完全に治ったわけではないので、症状が出なくなっても勝手に服用を止めてはいけません。
甲状腺の機能が低下する病気には橋本病の他にも色々なものがあります。
甲状腺の臓器そのものに異常がある「原発性甲状腺機能低下症」、脳の視床下部や下垂体の問題による「中枢性甲状腺機能低下症」、バセドウ病の治療が原因の「医原性甲状腺機能低下症」、生まれつき甲状腺ホルモンが不足する新生児の「クレチン症」、細菌感染による「急性化膿性甲状腺炎」、原因は分からないが自然に回復する「亜急性甲状腺炎」などがあります。
「甲状腺の病気 ~バセドウ病と橋本病~」