更新日:2018.07.02
執 筆:整体師 荒木晶子
バセドウ病は甲状腺の機能が亢進することによって症状が現れる病気で、甲状腺の病気の中で最も多く、患者さんの20%を占めます。
男女比は1:4で女性に多く、30代を中心とする20~40代の女性に多い傾向があります。
男性は少ないのですが、かかると症状が重く、治療が長引くといわれています。
1840年にドイツ人の医師カール・フォン・バセドウ氏により発見されましたが、それまでは心拍数の上昇や落ち着きのなさから、精神病の一種だと考えられていました。
一見すると元気いっぱいですが、いつも小走りしているような代謝過剰な状態で、交感神経が亢進している状態が続きます。
特徴的な症状は「首(甲状腺)の腫れ」「眼球突出」「頻脈」です。
バセドウ氏の診療所の地名にちなみ「メルセブルグの3徴」といわれています。
その他にも、
等がみられます。
このような症状から、心臓病、高血圧、更年期障害、子供は落ち着きの無さからLD(学習障害)に、高齢者は元気がなくなりうつ病に間違われることもあります。
バセドウ病の原因は現代医学でもはっきり分かっていませんが、自己免疫疾患が原因ではないかと考えられています。
自己免疫疾患とは、本来、体内に入った異物(抗原)を抗体が攻撃するはずが、なぜか自分の体の組織や細胞を攻撃してしまう状態のことです。
バセドウ病の場合、甲状腺刺激ホルモン受容体が異物(抗原)と勘違いされて攻撃・刺激され、過剰に分泌してしまうことが原因といわれています。
自己免疫疾患もバセドウ病と同様、若い女性に多い傾向があります。
過剰に働いている甲状腺機能を「チアマゾール」「プロピルチオウラシル」という抗甲状腺薬で抑えて治療します。
効果は早い人で2~3週間であらわれ、遅い人でも2~3ヶ月で症状が改善します。
しかし、薬によって症状を抑えているだけなので、途中で服用をやめてしまった時の再発症率は60%といわれており、医師の指示のもと徐々に減薬することが必要です。
また、内服を始めて3ヶ月くらいで2割くらいの割合で副作用が起きる人がいます。
多いのは、かゆみや湿疹、黄疸や吐き気などの肝機能障害、無顆粒球症による細菌感染による喉の痛みや発熱、関節痛などです。
副作用があらわれた時は、薬を変えるか、治療法を変更します。
抗甲状腺薬が効かない場合や、副作用が強い時、手術後の再発時に用います。
放射性ヨードのカプセルを服用し、甲状腺に集まった放射性ヨードが放出する放射線により組織を破壊させ、亢進した機能を落ち着かせます。
体内に取り込まれた放射性ヨードは数週間強く作用しますが、3〜6ヶ月で体から消え、副作用の心配もないと評価されています。
しかし、放射性ヨードが効きすぎると機能が低下する場合があり、症状の回復が期待できない時は、甲状腺ホルモンを補う薬を一生飲み続ける必要が出て来ます。
それでも、バセドウ病は二度と再発しないため治療は成功とされます。
放射性ヨードは安全とされていますが、「18歳未満」「妊娠中」「授乳中」「1年以内に妊娠希望」の方には使用できません。
抗甲状腺薬、放射性ヨード治療が適さない方、早く確実に治したい人に適しています。一部を残しほとんどの甲状腺を切除する方法と、全摘出があります。
およそ1週間で退院でき、手術の跡も1年くらいで目立たなくなります。
合併症は、声帯を動かす反回神経を損傷した場合の声がれ、副甲状腺損傷による機能低下症による血中カルシウムの不足による手足のしびれや痙攣(テタニー発作)などがありますが、専門医のもとであれば起こる可能性は低いとされています。
全身麻酔のため、心臓や肺に重篤な疾患のある方には適しません。
これらの治療で症状が改善したとしても、体質は変わっていないため「全快」ではなく「寛解」とされています。
減薬しながら血液検査をして寛解判定します。
寛解判定を受けるまでは心臓に負担をかける運動、熱いお風呂は控えるようにします。
検査の値が正常になり寛解判定を受けても、定期的な検査は欠かせません。
「甲状腺の病気 ~バセドウ病と橋本病~」