更新日:2018.07.02
執 筆:整体師 荒木晶子
自律神経に影響を及ぼすと言われている化学物質の一つであるカフェイン。
おうちやオフィスでの休憩タイム、レストランやカフェ、コンビニ、自動販売機などで、カフェイン含有のドリンクを飲んだことのない人はいないかもしれません。
そのくらい身近な存在のカフェインですが、中毒や大量摂取による事故も起きています。
カフェインが体に良くないと言うのは耳にしたことはあるかもしれませんが、実際のところカフェインとはどんなものなのでしょう。
体へ及ぼす影響、どんな物に多く含まれているのか、良い面も悪い面も含めて検証していきたいと思います。
カフェインは身体的(自律神経)・精神的に興奮をもたらす物質です。
純粋なカフェインは炭素、窒素、水素、酸素から成る化合物(C8H10N4O2)で、無臭でわずかに苦い白い粉末状のものです。熱湯には大量に溶けますが決して融解はせず、ドライアイスのように摂氏178度で気化します。
カフェインは、コーヒー、茶、ガラナ、マテ、カカオ、ガラナなどの数十種にものぼる植物の実、豆、種、さや、殻、葉、樹皮などに存在し、世界中で毎年12万トン以上のカフェインが消費されています。
これは地球上の全ての人間が週に5杯のコーヒーや紅茶を飲んでいることになる量と言われています。
カフェインを作り出す植物は、有害な細菌を殺し、害虫を不妊にし、周囲の雑草の成長を妨げ自らを守る力がありますが、最終的には自らが作り出したカフェインで自滅してしまいます。
色々な植物に含まれていることはお伝えしましたが、身近な物にどれだけの量が含まれているかご存知でしょうか。
以下を見ていただくと、コーヒーや紅茶だけでなく、煎茶やほうじ茶にも意外と含まれているのが分かります。
食品名 | カフェイン濃度 | 備考 |
コーヒー (浸出液) |
60mg/100mL | コーヒー粉末10g 熱湯150mL 1.5~4分 |
紅茶 (浸出液) |
30mg/100mL | 茶5g 熱湯360mL 1.5~4分 |
せん茶 (浸出液) |
20mg/100mL | 茶10g 90℃430mL 1分 |
ほうじ茶 (浸出液) |
20mg/100mL | 茶15g 90℃650mL 0.5分 |
ウーロン茶 (浸出液) |
20mg/100mL | 茶15g 90℃650mL 0.5分 |
玄米茶 (浸出液) |
10mg/100mL | - |
カフェイン含有量は、茶葉の発酵時間や抽出時間が長ければ長いほど多くなります。
またティーバッグのほうがカフェインが水に溶けやすく、リーフティーの2倍近くもカフェインが含まれます。
ジャスミンティーは茶葉に香りを着けているお茶なので、カフェイン量は茶葉の種類や抽出時間により異なります。
また、ココアやチョコレートにもカフェインは含まれています。
カフェインレス・コーヒーは98%以上カフェイン除去と記載されているものが多いですが、銘柄によっては180ml中10mg未満〜20mg以上含まれているものもあり、ノンカフェインではありません。
カフェインは水に溶けやすく全ての細胞膜を透過します。
摂取したカフェインは胃腸から血管に吸収されて、すばやく体全体の器官へと運ばれます。
なので、コーヒーや紅茶飲み干してまもなくすると、カフェインは体内のほとんど全ての細胞に広がっています。
カフェインは多くの薬品とは異なり透過性が高いので、カフェインが組織を通過するのを妨げる壁がない人間の体内では、カフェインが到達する濃度は血液や唾液、母乳や精液でもほぼ同じとなります。
カフェインの濃度が体内で最大になるのはコーヒーや紅茶を一杯飲み干してから1時間もかかりません。
また、体内のカフェイン濃度は体重と相互関係があり、カフェイン含有量100mgのコーヒーを一杯飲んだあとでは、体重100kgの男性の場合の濃度は1mg/体重1kgとなり、50kgの女性の場合2mg/体重1kgとなります。
そして、カフェイン含めて人間が摂取するほとんどの化学物質は、最終的に肝臓に辿りつきます。
胃腸から吸収され、関門脈を通り肝臓を通過し、そこで代謝され98%以上が代謝物に変化し最終的に尿で排出されるのです。
残りはそのまま体内を通過します。
(この代謝のスピードは人種、年齢、性別、飲酒、喫煙、服薬などにより大きく異なってきます。)
カフェインは透過性が高く吸収も排出も速く、体中のどの器官にも蓄積しません。
体内に取り込まれた一定量の化学物質が半分になるのにかかる時間を「半減期」といいますが、カフェインの半減期は殆どの動物で2時間~4時間となっており、9割以上が約12時間で排出されます。
しかし、カフェインの興奮作用は自律神経の働きを乱し、それが症状を作ることがよくあります。
カフェインとコーヒーは、心筋梗塞、不整脈、高血圧、高脂血症、痛風、不安感などに始まり、乳腺症、がん、先天異常、骨粗鬆症に至る病気の原因と長らく信じられ研究されてきたが、問題の多くは未解決のままと言われています。
ある実験によると、カフェイン耐性のない被験者では、急激なカフェイン摂取が血圧やカテコールアミン量、血漿レニン活性、コルチゾール、脂肪酸、尿の排出量、胃液の分泌の一時的増加と関係あることは間違いないが、カフェインの常用者にはこのような反応は起こらなかったそうです。 これらの研究の一部がこちらです。
研究者B・H・サンはコーヒーを飲んだ後では高血圧でないものも含め、血圧や心拍数が増加する事を発見した。
正常血圧のグループは心拍数の上昇は見られなかったものの、高血圧のグループはカフェインを摂った日は心拍数が大きく増加した。
カフェインは体中の小動脈の収縮の原因であり、高血圧者は運動中や運動前にカフェインを摂るのを避けるべきでしょう。
ポーランドのオレゴン健康科学大学の小児心臓学特別研究員ブルース・ハーディの1995年の研究によると、正常血圧患者の場合、カフェインの服用は心拍数を下げ血圧を下げ負担を和らげるので、心臓が運動に耐えやすくなるとのこと。
コーヒー2杯分のカフェインは、慢性で持続性の狭心症患者が痛みを感じずに歩ける距離を伸ばし、運動時間を12%増加させます。
カフェインは小腸からの水やナトリウムの排出を促すが、コーヒーはそうではない。
これは、コーヒーの成分の一部がカフェインの効果を中和しているのかもしれないという研究がある。
また、コーヒーは結腸末端運動を刺激して排便を促すが、同様の事がカフェインレス・コーヒーでも起こることから、カフェイン自体とは関係がないのかもしれない、と言われています。
イライラ、疲労感、乳房の張りや圧痛、頭痛、不安感、抑鬱、甘いものや塩辛いものを欲しがること、にきび、睡眠パターンの変化など、100以上とも言われる症状は、年齢とともに悪化するがその原因は分かっていない。
コーヒーやお茶、コーラ1日に8〜10杯飲む女性PMS発生率はカフェインを摂らない女性の約7倍だった。
しかし、PMSはカルシウムやビタミンB群の欠乏、セロトニン量の減退やその他の要因にも関係があるから、カフェインを控えるだけでは症状の全てを軽減する事にはなりません。
カフェインは目の血管の圧迫により眼圧を増大させ、さらには緑内障を起こす危険を大きくしているかもしれません。
また、コカインやアンフェタミン、アドレナリンのような刺激剤と同じように、眼球を膨張させるため細かい作業を困難にするが、これは膨張した状態の眼球では短い距離での焦点が定めにくいからであると言われています。
食事の1時間以内に摂取されたカフェインは食品中の鉄分の吸収を妨げる可能性がある。
酒もタバコも摂らない出産後の女性のヘモグロビンを調べたある研究では、コーヒー愛用者では鉄分の欠乏が通常の2倍も起こり、母乳内の鉄分量も少ないことを発見しました。
鉄分は最終的に酸素を運ぶヘモグロビンになります。
鉄分の吸収が抑えられるとヘモグロビンが作られず、体のなかが酸素不足になります。
酸素は体の中でエネルギーとなり、自律神経などを動かして生命に必要な代謝を行っていますので、鉄分の吸収が抑えられると自律神経の働きが悪くなります。
また、グレープフルーツジュースはいくつかの薬の効果を大きく変化させるが、血液中のカフェイン量を増加させることでも有名です。
(カフェイン大全より引用)
世界保健機関(WHO)によると、カフェインの胎児への影響はまだ確定はしていないとしつつも、妊婦のコーヒー摂取を1日3~4杯までにするように呼びかけています。
また、英国食品基準庁(FSA)やカナダ保健省(HC)でも、出生時の低体重や将来の健康リスクを懸念して、WHOよりもやや厳しい、コーヒーを2杯程度に制限するよう求めています。
妊娠中はカフェインの入っている飲食物は避けたいところですね。
「不眠・うつ・不安・疲労などの原因になるカフェインの真実」