「感情の抑圧」が不安やうつにつながる

2019年9月開催 心と体の勉強会 音声テキスト No.6

No.5では、私たちがかぶっている「仮面」の話をしながら、仕事のストレスや精神的なストレスに対処する方法についてお伝えしました。
ここでは、不安やうつにつながる「感情の抑圧」についてお伝えしていきます。

不安やうつの背景にある「感情の抑圧」

ストレス抵抗力が弱まると不安になる

参加者Dさん「不安と緊張というのは似たようなものですか?」

「不安」はですね、簡単に言うと、この交感神経の感情を抑圧しすぎると、不安になるんですよ。
「不安症」とか「不安神経症」とか、「強迫神経症」とかいろいろ病気がありますけど、多くの場合、というか僕がみたほぼ全員と言ってもいいくらいの方は、交感神経の感情の抑圧が強いんです。

いわゆる「興奮感情」、つまり交感神経を活発化させる感情ですけども、この「興奮感情」を出さないと交感神経は高まらないですね。
交感神経が高まらないということは、「ストレスに弱くなる」ということなんです。
ストレスに抵抗するのが交感神経ですから。

交感神経を刺激する興奮感情を抑圧すると、交感神経の力が低下します。
低下するとストレスに弱くなります。
ストレスに弱くなるから、いろんなことが不安に感じちゃうんです。

意識して地道に対策を続けていくことが大切

こういうことが分かっても、明日から「よし、やるぞ」とはなかなかできないです。
ちょっと気恥ずかしさがあったりとか。

僕がこういう勉強をし出したのは20年前くらいで、体の専門家だったところを、心の専門家にもなろうと勉強を始めたんですね。
自分が28歳から30歳までうつになったので。

うつの時から少しずつ勉強を始めたんですけど、僕が泣けるようになったのは、40歳くらいです。
10年くらいかかってます。ちゃんと泣くのに。
心の底からちゃんと涙が出て、心の底から悲しいと思えるというところまで、それくらい時間がかかってます。

だから、徐々に、です。
でもこれは、続けていくと必ず変わっていきます、必ず。
普段あんまり大きな声を出せない方でも、大きな声を出せるようになりますから。
「○○さん、うるさい」とか言われるようになりますから、練習していくと。

ただ、こういうことを意識してやっていないと、筋肉を動かそうとしたり大声を出そうとしていれば出てくるんですけども。
声とかをあまり出さないようにしていると、のどが狭窄していっちゃう。
これも筋肉なんですよ。
「咽頭収縮筋」という筋肉があって、筋肉なので収縮するんですよ。
そうすると、女性に多い「ヒステリー球」とかね。
「飲み込みづらい」とか、「息苦しい」とかそういう症状も出やすくなっちゃう。

なので、最初は、あんまり(声が)出ないかもしれないけれど、やっていくと出るようになります。
それはもう、地道にやり続けてください。
もしも分からなくなったら、うちのスタッフにきけば、教育しているので皆わかっているので。
どういう風にやった方が良いか。

感情をぶつけられない相手の場合

参加者Bさん「私は母と同居しているので、調子が良いと、もう母と喧嘩するとイヤな気分になるから、怒らないで我慢して、どんどん溜まってうつになるとすごく不安が強くなるんです。今は調子が良くなって少しずつ、こないだも勉強会に出させていただいて、なるべくその場で思ったことをすぐ伝えるようにしてます。ただ、それもやる価値はあるけど、そればっかりじゃなくて、さっき仰ったように映画を観たりだとかそういうことをすると、こっちが軽くなるということですよね」

そうです。
なぜかというと、相手はお母さんだから、本気ではいけないわけですよ、もう年老いてきてますから。
そうすると、怒ろうとする自分と、かわいそうだからやめなさいっていう自分が出てくるわけですよ。

参加者Bさん「そうなんですよ。自分が悪者になっちゃう…」

そうです、それが、抑圧に変わってくるわけです。
相手が人だと、関係性もあるので、限界があるわけですよ。
とくに肉親であったりとか、近ければ近いほど。

まして、昔憎んでいた父親母親がもうヨボヨボになっていると、「昔俺のことこう言っただろう!」「私のことこう言ったでしょう!」なんて言えないですよね。

そうすると、そういうのは、別のところで発散しないと。
別のところでまずやってあげると。
人に対して言う方法もあるんですけど、それはちゃんとしたセラピーとして、その人がいない状態で、その人がいるかのような対応をしていくっていう方法があるんですけど、専門家が必要なので。

ご自分でやる場合には、怒りたかったら怒っていい場所…例えばボクシングとか格闘技場で「やってしまえ、このやろう!」とか言ってもあんまりびっくりされないですけども、お母さんに対して声を荒げたらご近所さんにもびっくりされますよね。
そういうこともあるので、そういった場所で、自分の感情を解放させていく。

参加者Dさん「うつになるというのは、どこかしらで抑圧をしているんですね」

してます。必ずしてます。
僕もうつになった時はこんなこと知らなかったですけども、自分が学んでいって、自分のことを振り返った時には、相当(抑圧)していました。

修行でストレスに強くなる!?

参加者Dさん「自分なんかは、なんで自分がストレスにそんなに弱いんだろう、ストレスに強くするにはどうしたらいいんだろう、修行でもしたらいいのか…と思うんだけど、あまり効果がないんですよね」

修行もですね、本当にもう差し迫った修行というか…「護摩行」ってありますよね。
火の前にずっといるもの。
あれはもう、ものすごい火の熱さに対して…「熱さ」のレセプターというものが体にはあって、交感神経をものすごく上げるんですよ。

だからあれは、火の前に立っているだけで全然動いていないですけど、交感神経がものすごく活性化しているんですよ。
そうすると、ぶわーっと交感神経が上がるから、そのあとスーッと下がっていくんですね。

だから実は、危険な目というのにも遭った方がいいんですよ。
なぜみんな辛いものを食べるか分かりますか?
あれも刺激なんですよ。
辛いものを食べるというのは…うつの人はダメなんですけど、火の前にいるのと同じ状態なんです、体が。

だから交感神経がバーッと上がるんですけど、交感神経の上がり方がカフェインと違って、コーヒーはアドレナリンだけが出るんですけど、火とか唐辛子の場合は、ランナーズハイのときに出る「エンドルフィン」というのも出てくるんです。
だから、熱いけど「気持ち良い」になってくるんです。
「エンドルフィン」というのは「気持ち良い」状態にするホルモンですね。

だから、護摩行も最初はつらいんですけど、だんだん交感神経が上がってくると、熱いのは熱いですけども、だんだんスーッとしてきちゃうんです。
「じゃあ皆さん護摩焚きに行ってください」というわけにもいかないので、とりあえず、筋肉を動かしたり大声を出したりということが、ストレスに対して強くなる方法です。

「感情の抑圧」は幸せや喜びも感じにくくする

「ストレスを感じない」という落とし穴

「自分にはストレスがそんなにない」というのは、実は、最初にお話しした「正座をしていると最終的にはまひして痛みも感じなくなる」というのと一緒で、抑圧しすぎると、自分のストレスに対してまひしてきちゃうんですよ。
そのことをストレスとして感じないようにしようとしちゃうんですね。

でも体はストレスとして感じているんですよ。
だけど、ストレスとして感じないようにしようとします。

例えば、「私あんまり怒りって湧いてこないんだけど…」と言う人がたまにいるんですが。
それは、怒りの感情に鈍感になっちゃっているんですよ。
あんまり抑圧しすぎて。
そういう人たちが怒りを感じるまでにも、結構時間がかかってくるんですけど。

男の人で、「悲しいって別に感じないんですけど…」と言う人。
だけど、それも簡単に言えばまひです。
まひしている最初の短期間はいいんですけど、長期間になってくると、結構大変なことになる。

悲しみを感じられないと幸せも感じられない

例えば、「悲しみ」というのは感じないと、実は、「幸せ」を感じなくなってくるんです。
そうすると、幸せを感じないので、「喜び」ばかりを感じようとするんです。
それが良いと思って。
余計に交感神経が緊張しちゃうんですね。
「喜び」って何かというと、強刺激なんです。

どういうことかと言うと、「あー幸せだなー」じゃなくて、「イエーイ!」になるわけです。
「あー幸せだなー」と感じるのは副交感神経です。
それを感じにくくなると、楽しいことしたいじゃないですか。
楽しいこと、喜びのほうにいって、だんだんだんだん強刺激になっていくんですね。

どういうことかと言うと、例えばギャンブルとか。
そういう、ものすごく刺激的なものに走っちゃうんですね。
いくら刺激的なものに走っても走っても、自分は満足できない。
「これは何なんだ」というのが、中高年の男性に出てくるわけです。

なぜか。
悲しめないということは、副交感神経が働かない。
副交感神経が働かないということは、幸せを感じるということも低下してきちゃうんですよ。

だから、悲しめた方が、幸せは感じられる。

怒りを感じられないと喜びも感じられない

逆に、怒りを感じないと、「喜び」が感じられないんです。
充実感とか。

交感神経の方はちょっとテンション高い系、副交感神経の方は低い系と思っていただければいいんですけど。
悲しみが感じられなければ、低い系のものは全部感じられなくなるんですね。
テンションが高いほうが良いかというと、「幸せ」というのは低い系なんですね。
そういう(テンションが)高い人って、なんとなく「懐かしまない」感じがしませんか?
昔を振り返ったりしない。
そういう人は、副交感神経系が働かないんですね。
昔を振り返らずに前を向いてガンガン行く人が多いです。
刺激的なものを好んで。

それはそれで良いんですけど、(交感神経系も副交感神経系も)両方とも働くということが大事ですよね。
とくに、人生の前半は交感神経系でも良いんですけど、後半は副交感神経系が必要なんですよ。
興奮して人はなかなか満足して死ねないと言います。
やっぱり最期は副交感神経系の側で、安らかに、自分の人生に満足して死ぬのが良いみたいですよ。
僕は死んだことがないので分からないですけども(笑)。


自律神経