交感神経と筋肉をきちんと使っていますか?

2019年9月開催 心と体の勉強会 音声テキスト No.2

No.1では、自律神経の基礎知識として、自律神経のバランスや、血流・痛みとの関係についてお伝えしました。
ここでは、自律神経が乱れる原因や、自律神経の状態がどのように症状につながっていくかなどについてお伝えしていきます。

自律神経が乱れる原因

自律神経が乱れる原因=「4つのストレス」

じゃあ、なぜこういうこと(自律神経の乱れ)が起きるかというと、原因として言われることに「ストレス」というのがありますね。
「眠れないんです」「食欲がないんです」と言うと、「ストレスですね、それは」とか言われますね。

では「ストレス」とは何か。

ストレスというのは、4つあるんですね。

1つは、皆さんが思うような「精神的ストレス」です。
つまり、「イヤだな」と思うことですね、人間関係だったりいろいろありますね。
それがストレスになります。

2つ目は、「構造的ストレス」です。
体のゆがみだったり、体の緊張もそうですね。
そういう、体の構造的なおかしさがストレスになっていくということですね。

3つ目は、「化学的ストレス」です。
これは何かというと、簡単に言うと「栄養素」です。
あとは他にも、腐ったにおいとかイヤじゃないですか。
そういう腐乱したにおいとかも、化学的なストレスになります。
あとは、それぞれの嫌いなにおいもそうですね、他の人が「良いにおい」と言っていても、自分は嫌いだというのも全部そうです。
においというのは体に入ってきちゃいますから。
だから食べ物とかもそうだし、そういう、体の中に入ってくるものですね。
これが化学的なストレスですね。

4つ目が、「温度湿度のストレス」、あと気圧とかのストレスです。
暑すぎてもダメだし、寒すぎても当然ストレスになります。
気圧なんていうのも、「雨の降る前に古傷が痛む」なんて言いますね。
あれも、ストレスからなっているわけですね。

じゃあこの4つのストレスというのがあるんですけど、これらのストレスがあると自動的に交感神経が上がっちゃうんです。
もう自動的なんですね。
生物として生き抜くうえでは、「ストレスがあったら交感神経を上げる」ということが必要なんです。

なぜかというと、本来ストレスというのは何かというと、刺激なんですね。
どんな刺激かというと、「自分の生命が脅かされる」という刺激なんです。

交感神経と筋肉でストレスに対処する

例えば僕が自分の本で書いた話だと…牛がいます。
ライオンが来ました。脅かされますよね。
そうすると、交感神経が上がらなきゃいけないんです。

なぜかというと、ライオンから逃げなくてはいけないですね、もしくは、戦うか。
どちらにせよ、筋肉を使いますよね。
筋肉というのは、糖と酸素で動くんですね。
なので、血液をいっぱい流したいんです。

血液を流すのは副交感神経なんですが、副交感神経では流し足りないんです。
心臓をバクバクさせて…心臓がバクバクするというのは交感神経の働きですが、バクバクさせて血液を強制的に、血管が細くはなっちゃうけれど血圧を上げてたくさん遠くに飛ばして流すために細くなるわけですね。
ゴムホースも、途中をキュッとおさえると水がピュッと飛びますよね。
キュッと収縮すると、たくさん先の方まで流れるんですね。

そうやって脳と筋肉のほうに血液をたくさん流すことが必要だから、交感神経が働くわけですね。
そのとき、動物は何をするかというと、筋肉を使いますね。

だけど、僕らにストレスが加わったときって、どうしますか?筋肉使ってますか?

例えば、良い例だと…ムカつく上司とかいませんか?皆さん。
いなくても、いたとしましょう。
何かいやがらせとしてきたとかで、ムカッとしたとします。
もうストレスですね。

本来はどうしたいかというと、簡単に言うと、蹴とばしたい、ぶっ飛ばしたいみたいな感じなんですよ。
そうやって筋肉を使うんですけども、人間社会では出来ないですよね。
動物の世界では、逃げるか、角を振り回してライオンを追っ払ったりするんですけど。
人間社会ではそういうことができないので、ここで、交感神経が働くにもかかわらず、筋肉を使わないという、生物的にはすごい葛藤状態なんですね。
そのために、交感神経を使い切らないんですね。

交感神経をきちんと使わないとダラダラ働き続ける

夜、何か思い出して寝られないときってありませんか?
そうやって思い出しているときって、交感神経は緊張しているんですよ。

例えば「あのときこう言えば良かった」とか、ストレスを思い出しているとき…特に精神的ストレスを。
そこでも、筋肉は使わないんですよ。
「そんなこと考えずに寝よう」と思っても頭の中に思い浮かぶ。
そういうことってあると思うんですけど。

本当は、昼間の交感神経が上がっているときに嫌なことがあると、交感神経はさらに高く上がるんです。
でも、筋肉は使わないので、無理くり交感神経を抑え込むんです。
本当はもっと高くいきたいんですけど、それを途中でやめちゃうんです、筋肉使わないと。

そうすると、使い切っていない交感神経のエネルギーがあります。
それが、ダラダラ働いていくんですね、下がりきらずに。
だから、「運動が体に良いですよ」というのは、こういうことなんですね。

人間というのは、社会で生きていると、「ストレスが加わって交感神経が緊張した時に必ず筋肉を使う」ということをしない、できないんですよ、社会で生きていけないので。
「何あの人」とか、クビになったりとかになっちゃうわけです。

なので皆さん「我慢」というものをしますね。
我慢すると、本当は嫌なことがあったときに上がるべき交感神経を抑え込んでしまうと…夜寝る時にも交感神経がダラダラいつまでも働いちゃうんですね。
もしも、上がるべき時に交感神経を使ってしまえば、その後スーッと落ちていきます。

なので、例えば「運動すると良く眠れる」なんて言われますけども、こういうことなんですよ。
交感神経を1回上げちゃうと、下がりやすくなる。
ところがそういう(ストレスがある)時って悶々としていて、我々は結構体を動かさないですよね、そういう時って。
だから例えばボクシングジムに行って、サンドバッグめがけて嫌いな人の顔だと思って打つ、みたいなことをやっていると、交感神経が上がるのでスーッと下がるんですけども。

動かさないための筋肉の緊張

多くの場合は我慢することに慣れちゃっているので、交感神経が上がるところでグッと我慢しちゃうんですね、嫌なことがあっても。
あとは教育されますよね、「怒ってはいけない」とか「感情的になるな」とか「大人でしょ、子どもじゃないんだから」とか言われちゃうんですけども。

そういうところでグッと我慢しすぎると、残っちゃうんですよ、交感神経の働きが。
なので、「筋肉を動かす」ということが重要なんですね。
で、交感神経が上がるのをどうやって止めるかということも重要なんですけど。

筋肉というのは、相反しているんですね。
ちょっと専門的なんですけども、いわゆる「力こぶ」というやつは、肘を曲げる筋肉なんですね。
「上腕二頭筋」と言いますね。
でも、人は肘を伸ばすこともできますよね。
だから、肘を伸ばす筋肉というのもちゃんとあります。
これは「上腕三頭筋」と言います。

上腕二頭筋をグッと縮めるときには、上腕三頭筋は緩くなるんですね。
硬くなっていると、伸ばす筋肉と曲げる筋肉で(拮抗して)肘が固まっちゃうんですよ。

で、「交感神経が上がるときに筋肉を使わない」と言ったんですけども、実は、「使わないように筋肉を使っている」んですよ。

難しいですけど、どういうことかと言うと、例えば、ただ単に上腕二頭筋だけを使おうとすると、こうグッと勢いよく肘が曲がりますね。
そうならないように(適度に曲がるように)、上腕三頭筋が緊張するんですよ。
だから、「このやろう」と蹴とばそうとして脚を上げる筋肉と、下ろす筋肉を同時に使って上げ過ぎないようにしているんです。

そうやって緊張が生まれるわけですね。
なので、筋肉は使わなきゃいけないんだけども、使わないように緊張しちゃうというのもあって、その緊張がまた残ってしまうんですね。
特に首肩なんていうのは。

例えば、「怒っている人を形態模写して真似してください」と言ったら、グッと肩を上げて手を握って緊張させますよね。
あんまりだらっと力の抜けた状態になる人はいないと思うんですけど。

この怒っているときの緊張も、自分の体が動かないように緊張しているんですよ。
動いちゃうと手を上げたり、変なことをしてしまうから。
だから、筋肉を使わないように筋肉を緊張させるんです。

我慢は筋肉とエネルギーのムダづかい

そういうことがあると、さっきの話でいくと、上腕二頭筋が収縮するのと、上腕三頭筋が収縮するというのが同時に起こると固まりますよね。
これが緊張というのはわかりますね。

そうすると、上腕二頭筋でもエネルギー、糖と酸素を使いますし、上腕三頭筋でもエネルギーを使いますよね、両方の筋肉を使ってますから。
そうすると、本来は単に肘を曲げるだけなら二頭筋だけのエネルギーの消費で済むのを、三頭筋のエネルギーの消費も加わるわけです、適度に曲げるときには。
そうすると、倍のエネルギーを使うんですよ。

だから皆さん、我慢した時って疲れませんか?
肩を上げる筋肉と下げる筋肉を両方とも緊張させたりとか。
何かイヤなことを我慢している、イヤな会合とかありませんか?
僕はたまにあるんですけど。
そういう時って「もう早く帰りたいな」とか思って、終わると「あー終わった、疲れた」って言いますけども、そんな時って全身の筋肉が緊張しているんですよ。
だからエネルギーがたくさん使われちゃうんです。

それがクセになっていると、疲れるんです。
普通に食べていたり、普通にみんなと同じことをやっているんだけど、「なんで私だけこんなに疲れるの?」というのは、アクセル踏みながらブレーキをかけているようなもので。
自転車だったら、ブレーキを握りながらペダルを一生懸命漕いでいるわけですよ。
みんなと同じスピード、距離なのに自分だけなんで疲れるのかというと、ブレーキをかけているからなんです。

それが、「筋肉を使わないように使っている」というやり方なんです。

交感神経と筋肉をきちんと使うことが重要

動かすために筋肉を使いましょう

なので、こういうことをやっていると、筋肉が緊張しちゃっていると…例えば、足踏みのような運動をするとしますね。
脚を上げるときには「大腰筋」という腰を前から支えている筋肉を使って上げているんですけど、上げっぱなしだと大腰筋は疲れてしまいますね。
緊張したままなので。

でも、上げて下ろしてを続けていると、筋肉というのは緊張したり緩んだり緊張したり緩んだりしているんですね。
そうすると、この動きがポンピング作用になって血液の循環が良くなるわけですよ。
グッと緊張したままだと、さっきも言ったように筋肉が血管を押しつぶしちゃうんですけど、筋肉を動かしていると、緊張したり緩んだりでポンピング作用になって血液が流れるようになるんですよ。

「運動が体に良い」と言いますけど、心にも良いんですね。
なので、ストレスがたくさんある人ほど、筋肉というのは動かしたほうが良いんです。

実は、筋肉というのは、さっき出てきた「小脳」がコントロールしているんですね。
「どのように筋肉を動かすか」というのを。
筋肉を動かしていると、その「筋肉が動いている」という情報は必ず小脳に伝えられます。
そうすると、小脳は情報の入力に対してその処理をしようとしますね。
そうすると、頑張って働こうとするわけです。
働こうとしているところには、血液がたくさん入り込むんですね。

めまいのある人って、休んじゃうんですけど…休むのは確かに必要な時は必要なんですけど、少しずつ動いていかなきゃいけないんですよ。
動くことによって、さっき推測ですけども「めまいの原因かもしれない」と言った「小脳」にもちゃんと血液が行くようになって、神経のインパルス、電気信号が小脳に届くので、小脳が活性化してくるんですよ。
これは小脳だけじゃなくて、体のいろんなところに当てはまります。

エネルギーのムダづかいが「うつ」につながる

こういう人(交感神経が上がりきらずにダラダラ働いてしまう人)はだいたい、血圧が高くなってしまいます。

重要なのは、ここから先です。
この状態は、いわゆる「自律神経失調症」という状態ですね。
聞いたこともあると思います。
当院は一応これを専門にやっているので、お話聞いていると思いますが。

この状態、まさに「交感神経が上がって、副交感神経が下がる」という状態が続いてしまうのが、「自律神経失調症」なんですね。

このときはですね、「頑張れば出来る」んです。
眠れなかったりとか、お腹が空かなかったりとか、いろんなことが起こりますね。
首肩の痛み、腰の痛み、便秘になったりとか。
でも、頑張れば出来るんです。

そのまま頑張り続けるとどうなるかというと、ここで「うつ」というのが出てくるんです。

さっきも言いましたけど「自律神経失調症」というのは、交感神経をたくさん使っているので、筋肉の前と後ろ(曲げる筋肉も伸ばす筋肉も)両方使っているんです。
そうすると、2倍のエネルギーが必要となりますね。
ということはエネルギーをどんどんどんどん使っているということです。

エネルギーというのは無限じゃないですので、いつか、切れることがあります。
切れ始めたときに、「うつ」になります。

なぜか。
エネルギーをそれ以上使ったら、簡単に言うと、死んでしまうんです。
心臓を動かしたり、呼吸をする横隔膜というのは筋肉です。
だから、エネルギーが必要なんです、縮んだり伸びたりするのに。

でもそれが動かなくなったらどうなりますか?
当然、心臓が動かなかったら死んじゃいますよね。
脳に酸素が行かなくなって、脳が死んじゃう。
そういう状態になっちゃう。

エネルギーがなくなるというのはそういうことなので、体はわざとシャットアウトします。
そのシャットアウトが、「うつ」なんですね。

家の電気が、たまにブレーカー落ちたりしますよね。
あれは、容量以上の電気を流そうとすると、例えば電子レンジを使いながらドライヤーを使うとかね、こたつと電気ポットを同時に使うとかやると、電気が漏電して火事になっちゃう可能性があるわけです。
その火事を防ぐために、バチンとブレーカーが落ちますね。

このブレーカーが落ちた状態が、うつなんです。
なので、すぐに上げちゃダメなんですね。
すぐに上げると、またバチンとなりますね。
ドライヤーを外すか、こたつを抜くか、電気ポットを抜くか、電子レンジを終わらせるかしてからブレーカーを上げますよね。

それと同じように…それって何かというと、ストレスなんです。
ストレスのどれかを、削っていかなきゃいけないんですよ。
削っていかないと、無理やり上げても、やる気を出すとか言っても無理です。
生物的にもう無理です。
もし、無理くり働いたとすると、死んでしまいます。
それが、「過労死」とかそういうものになっちゃうんです。

だから無理くりやっちゃダメなんです。
まずは、電気ポットを抜くように、ストレスを減らしていく必要があるわけです。
そこが重要なんですね。


自律神経