からだに良いもの悪いもの

更新日:2022.06.16

執 筆:整体師 角道征史

気温の変化も落ち着いて、梅雨らしい日々が続いていますね。
変化のストレスが少なくなるのはうれしいですが、高い気温と高い湿度もまたストレスになります。

こうした季節にとても活躍する嗅覚と味覚についてみていきましょう。

嗅覚と味覚

前回までのお話のとおり、五感は人間が生き延びるために必要な感覚であると同時に、しあわせを感じるためにも、とても大切な感覚です。

高温多湿の季節には、カビの繁殖が起こったり、食中毒が頻発したりします。
こうした菌の繁殖が、かつては容易に人の命を失わせることにつながっていました。

しかし現代では、身の回りの環境がかなり清潔に保たれているので、そこまでの危険はありません。

それでもこうした菌やウィルスなどは人体に悪影響を及ぼすため、それを感じ取るためのセンサーとして嗅覚と味覚が活躍しています。

これまで見てきた視覚と聴覚は周波数を感じ取るセンサーであり、触覚は物理的な接触刺激を感じ取るセンサーでした。
それに対して嗅覚と味覚は体の中に入ってくる化学物質を感じ取るセンサーになります。

嗅覚

嗅覚は今の季節、カビのにおいや、生乾きのにおい、食べ物の傷んだにおいなど、不快なにおいを感じさせる化学物質を、距離のある時点で感じることで、体に害のあるものを遠ざけてくれます。

それだけでなく、アロマや自然の香りを嗅ぐことで、リラックスしたり、しあわせな気持ちになったりすることもできるのですね。

また嗅覚はその発生が五感のなかで最も古く、構造的にもダイレクトに偏桃体に刺激を送り込みます。

偏桃体は情動を司っているので、においは感情と密接にリンクし、それが記憶とつながっています。
つまり、においを嗅ぐことで、そのにおいにリンクした良い記憶やイヤな記憶を簡単に想起させてしまうのですね。

そうすると本来はイヤなにおいでなかったとしても、悪い記憶と結びついてしまっているために、このにおいは嫌い、ということが起こってきます。

こうした悪いイメージのリンクは、わたしたちの慢性的な症状にも関わっています。

味覚

そんな嗅覚に対して、味覚は距離のない状態で化学物質をセンサーして感じ取る感覚です。

その感覚の中に五味というベースになる味覚が存在します。甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の五つになります。

以前はそれぞれの味を舌の決まった部分で感じる、などと言われていましたが、現在ではそれぞれを一部のポイントで感じるのではなく、総合的に全体で感じるものであるとされています。

人間が生きるためのエネルギー源を摂取するという目的のために、甘味と塩味と旨味が必要です。
甘味は糖質であり最も効率のよいエネルギー源になります。
塩味はミネラルであり、エネルギーの代謝に必要です。
そして旨味はタンパク質であり、糖質と並ぶ代表的なエネルギー源なのですね。

また体に害のあるものを排除するという目的のために、酸味と苦味が備わっていました。
酸味、すっぱいものは腐ったものであり、苦味、にがいものは毒物です。
味覚はこのように、生きていくために必要なものです。

そして、美味しい!という感覚が、しあわせホルモンのドーパミンを分泌させてくれます。
ものを食べることを通じて、わたしたちはしあわせになることができるのですね。

直接的に生命の存続にかかわる嗅覚と味覚はストレスを感じるセンサーであると同時に、その感覚によってすぐにしあわせな気持ちにしてくれます。
命を守るために心地よい感覚でそれを求めるようにできているのですね。
快不快を上手に使いこなして、楽しんでいきましょう!