更新日:2018.10.02
執 筆:整体師 橋本静吾
何故無意識に噛みしめてしまうのか。これには脳や体の緊張が関係しており、緊張とリラックスのバランスを制御している大元である自律神経が関係してきます。
最近ではテレビ番組やCMでも自律神経の乱れ、自律神経失調症という言葉はよく耳にするようになったと思いますが、この自律神経が顎の不調に対しても大きな影響を与えています。
まず噛みしめ歯ぎしりと聞いて思い浮かぶのは「ストレス」ではないでしょうか。
実際にストレスの多い人の方が少ない人より噛みしめをしやすいのです。
そのため、噛みしめや歯ぎしりの原因はストレスであることは間違いないのです。
しかし、問題は「なぜ噛むのか」という点です。
結論から先にお伝えしますと、ストレスに対して闘おうとする反応が「噛む」という運動として現れるのです。
これは人間だけに限らず他の動物でも見受けられるごく自然な現象です。
身近な動物の犬で例をあげると、犬は嫌いな人や自分に危害を加えてこようとするものに対して噛みつきます。
この場合嫌いな人、危害を加えてくるものが犬にとってストレスなため、犬は自分を守るために噛みついて闘おうとするわけです。
噛まないまでも歯を噛みしめてガルル~と唸る犬もいます。
ストレスが大きく勝てそうもない場合は走って逃げます。
人間も犬と同様にストレスがかかると噛みついて闘おうとする本能的な反応によって顎周りに力が入ります。
厳密には顎だけに力が入るわけではなく、体全体の筋肉に力が入ることでストレスに耐えたり闘ったりしています。
ただ人間は理性によって闘おうとする本能を抑えこむのですが、抑え込むことが多くなると脳から近い顎の筋肉の緊張が強まるため眠っている時の噛みしめ歯ぎしりが起こってしまいます。
顎以外でも寝ている時に無意識にピクッと体が勝手に動いてしまうことがありますが、この運動もまた体の緊張が影響しています。
自律神経は無意識で生きるために必要な体の調整をしています。ストレスを受けた時の通常の働きとしては以下の通りです。
ストレス
↓
交感神経の働きが上昇
↓
体の緊張が高まり筋肉に力が入る
↓
闘う、又は走って逃げる準備完了
ストレスに対して大声を出して暴れて闘ったり、とにかく走って逃げたりという反応は動物として正常な反応です。
ただこの正常な反応をその場で表現してしまうと人間の場合はとても社会では生活していけません。
そのため文句があったり暴れたかったりしても我慢をするという能力が人間にはあります。
社会においても我慢できることが高く評価される傾向があるため、仕事や人間関係では我慢することが多くなりがちです。
しかし、ストレスへの正常な反応を抑えこむ量が増えすぎると体は何とかして発散しようとするために「噛む」という形でストレスと闘う反応を起こします。
噛みしめは顎の不調につながるため、なるべく避けたいクセではありますが、そもそもは体がストレスに抵抗して発散しようとするストレスへの対処なのです。