耳鳴りの原因

更新日:2011.09.30

執 筆:整体師 角道征史

耳鳴りを根本的に解決するには

耳鳴りで耳鼻科等にかかったとき、「歳だからしょうがないね」なんてのはもってのほかですが、メニエール、突発性難聴、耳管開放症、耳管狭窄症などの診断が下されることも多くあります。

しかし、これらは、なぜ耳鳴りが起きているのかわからないままに、出ている症状をみて診断した結果の病名であることが多いのです。

  • めまいがしているから...
  • 原因がさっぱりわからないから...
  • 響いてる感じがするから...
  • 詰まった感じがするから...

などなど。

耳鳴りが発生する原因

病名がついたことで安心するケースもあるかもしれませんが、それでは根本的な解決にはなりません。
そこをさらに踏み込んで、どこに原因があるのか突き詰めていくことが必要になります。
耳鳴りの原因となるものは、以下のようなものがあります。

  1. 心因性難聴
    ストレス刺激の増大によって自律神経に乱れを生じることにより起こるもので、うつなどもこれに相当します。不必要な音などを排除して、必要な音だけを拾い上げるという分別、調節作業ができなくなることによって発生します。

  2. 脳腫瘍
    大脳側頭葉にある聴覚野に腫瘍ができたときに、耳鳴り、難聴が発生します。

  3. 脳梗塞
    大脳側頭葉にある聴覚野、脳幹、小脳などにおいて、血栓が発生することで、血流障害が起き、めまい、耳鳴り、難聴が発生します。

  4. 上咽頭ガン
    咽頭の奥の上部にガンが発生し、それが広がっていくことで、内耳神経まで浸潤し、滲出性中耳炎、めまい、耳鳴り、難聴を発生します。

  5. 薬剤性難聴
    薬による内耳神経障害で、両側にあらわれることが多いです。結核の治療薬「硫酸ストレプトマイシン」「硫酸カナマイシン」が代表的です。

  6. 聴神経腫瘍
    内耳神経に発生する良性の腫瘍で、片側に難聴、耳鳴りを発生し、めまいや顔面神経麻痺にまで発展することもあります。

  7. 蝸牛神経炎
    帯状疱疹ウイルスなどによって、蝸牛神経に炎症が起きることで難聴、耳鳴りを発生します。突発性難聴の原因である可能性もあります。

  8. 副鼻腔炎
    副鼻腔の中でも、耳の後部にある乳突洞や蝶形骨洞に、カゼなどが原因で炎症が起きることによって発生します。乳突洞を通る内耳神経を障害すると、耳鳴りや難聴、めまいを引き起こし、蝶形骨洞側の耳管に影響すると耳管狭窄から、耳閉感、難聴を引き起こします。

  9. 動脈瘤
    椎骨動脈などに動脈瘤が生じることによって、内耳神経を圧迫し、耳鳴り、難聴、めまいなどを引き起こすことがあります。

  10. 動脈硬化
    椎骨動脈や脳底動脈などの血管が、動脈硬化によって血流障害を引き起こすことで、内耳神経の機能低下から耳鳴り、難聴、めまい等を生じます。脳底動脈の動脈硬化が進行すると、脳底動脈自体が太くなり、蛇行してしまう巨大脳底動脈症を発症します。血管自体の神経圧迫から顔面神経痛にまで至ることもあります。

  11. ヘルニア
    頸椎椎間板に起こるヘルニア(髄核の突出)によって椎骨動脈が圧迫され、血流障害からめまい、耳鳴り、難聴を引き起こします。

こうした疾患によっても耳鳴りは起こり、なかには重篤な病気が隠れていて、迅速な対応が必要とされることもあります。
しかし、上述のような疾患にはあてはまらず、はっきりとした原因が特定されていない耳鳴りが発生していることも多いです。

こうした場合、原因がよく分からないままに薬を処方したり、治療をしたり、アドバイスをされることがあります。
たまたま良くなることもありますが、その多くは改善せずに患者の悩みである耳鳴りは一向になくなりません。

原因が掴めずに、適切な処置ができないために耳鳴りが良くならない、その結果です。
果たして原因はほんとうに分からないのでしょうか。

耳鳴りの本当の原因

これまでみてきたように、音が伝わるということを考えたとき、そこにはいくつかの器官が介在します。
それらの器官を経て伝達されたものが、最終的にはフィルターにかけられて、必要な音が認識されるようになります。

この過程の中で、なんらかのトラブルがあったときに耳鳴りが発生するのですが、それは鼓膜が破れるなどの破壊的障害のときには起こりません。
なぜなら音の伝達自体がなされないからです。
このような場合には、音が聞こえなくなります。

耳鳴りのきっかけとなるトラブルとは

では、耳鳴りが起こる場合のトラブルとは一体どんなトラブルなのでしょうか。
結論から言うと、感音系のトラブルが耳鳴りを引き起こします。
センサーである蝸牛神経や、脳幹、大脳などに障害が起きたとき、正しい音の伝達がなされないために、耳鳴りという事態が発生します。

先に述べたような耳鳴りの原因となる疾患をみても、そのことははっきりと表れています。 心因性の場合はストレスによる脳の機能低下であり、腫瘍であれば物理的に障害します。 どんな形であれ、血流障害を起こせば、栄養不足によって蝸牛神経はうまく機能しなくなるし、ウイルスや細菌、その他の原因によって、神経自体が侵害されてもそれは同様です。

つまり、耳鳴りの原因として捉えられている疾患は、すべてこれらのパターンのどれかに分類されるのであり、脳か神経の障害あるいは機能低下によるものです。
では疾患もなく、原因がはっきりしていない耳鳴りはなぜ起こるのでしょうか。

なぜ、耳鳴りが起こるのか?

回路が破壊されれば、耳鳴りは起こらずに聞こえないだけなのです。
余計な音が聞こえてきたり、雑音を拾ったりすることで、耳鳴りは起きてしまいます。
回路に対する物理的な侵害や、何らかの形によって引き起こされる機能の低下が耳鳴りを発生させます。

そう考えてみると、背後に疾患が隠れていなくても機能低下が生じれば、耳鳴りは起こるのではないでしょうか。
ストレスによってホルモンバランスが崩れ、脳の機能が低下すると耳鳴りは起こる。
動脈硬化や、ヘルニアなどの血管圧迫による血流障害からも耳鳴りは起こる。

そうだとすると、疾患には分類されなくとも、筋肉の緊張、硬化、骨格の歪み、血管の細化などによって血流が阻害されれば、蝸牛神経の機能低下から、耳鳴りは起こる可能性はあります。

耳鳴りが起こる可能性のある要因

  1. 脳の障害
    脳の腫瘍など

  2. 脳の機能低下
    過剰ストレス、自律神経失調症、うつ、脳梗塞など

  3. 神経の障害
    がん、腫瘍、帯状疱疹ウィルスや細菌などによる炎症、薬の副作用による炎症など

  4. 神経機能低下
    動脈瘤、動脈硬化、頸椎椎間板ヘルニア、老化、猫背等の不良な姿勢からくる血流障害が原因の機能低下など

正しく原因を判別して対処を行えば、耳鳴りは解消する

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、40歳以下の有訴者率が1%なのに対して、65歳以上のそれは7%にものぼります。 これは、老化にともなって疾病の罹患率が増えていることに加えて、血管の細化による血流障害が蝸牛神経機能の低下を引き起こしているからだと考えられます。

また、統計こそ取れていませんが、さしたる疾患も抱えておらず、自律神経系の乱れもそうひどくはないにも関わらず、耳鳴りを訴えている患者は猫背である確率が高いようです。 これは姿勢による筋緊張や頸部のゆがみからくる血行不良によって、蝸牛神経の機能低下を招いているからではないでしょうか。

「耳鳴りは治りにくい」、そう言われることが多いです。
もちろん、治すべき時に治さないと治りにくくなることもあるし、自律神経の乱れの改善に時間がかかるということもあるでしょう。

しかし、原因があるから結果として耳鳴りになっているのであり、その原因を読み違えていては正しく対処することはできません。
正しい対処が行われなければ症状の改善を望むべくもないでしょう。

ウイルスによる炎症や、腫瘍の圧迫が原因なのに自律神経系だけを調えてもそれだけでは効果はあがらないでしょうし、ストレスが原因なのに抗菌薬や抗ウイルス薬を飲んでも、プラシーボ以外の効果は期待できません。
耳鳴りに苦しんでいる人のために、今よりもさらに正確に診立てて対処したいものです。

※プラシーボとは?

プラセボ効果(プラシーボ効果)とも、偽薬効果とも言われています。

例えば、「耳鳴りが収まるお薬ですよ~!」「ストレスがなくなるお薬ですよ~!」と言われて飲むと...
本当に良くなってしまったりすることがあります。

しかし、その薬と言われて飲んだものは、何の効果もない片栗粉の固まりだったというオチ。でも、そういう効果というものは我々にとってはあり得る話なのです。

こういった効果をここでは「プラシーボ」と呼んでいます。

「耳鳴り」

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