耳鳴りとは...?

更新日:2011.09.30

執 筆:整体師 角道征史

近年、増加傾向にある耳鳴りについて

2010年、音楽界の歌姫、中島美嘉が耳管開放症で芸能活動を休止せざるをえなくなりました。
次ぐ2011年、歌舞伎界の重鎮中村勘三郎も、特発性両側性感音難聴と診断され、講演を退かざるをえなくなりました。

いずれも激しい耳鳴りに悩まされての結果です。 このような事例を踏まえて、近年特に増加しているトラブルであり、かつ解決することが難しいとされる「耳鳴り」についてスポットを当てていきたいと思います。

自律神経と耳鳴り

まずは、自律神経と耳鳴りとの間にどのような関連があるのかについてみていきましょう。
自律神経とはその名のとおり、自分の体を意識することなく自然に調節してくれている神経です。活動する時に働く交感神経と、休むときに働く副交感神経が存在し、これがうまく関連し合って体の調整を行っています。

自律神経失調症とは

自律神経失調症とは、この調節の機能がうまく働かなくなってしまったものを言い、どこの調節ができていないのかによって様々な症状を呈することになります。

例えば、耳鳴り、めまい、眠れない、のどのつまり、動悸、むかつき、下痢、頭痛、全身の痛み、不安、イライラ、だるさ、無気力、うつ、パニックなど、色々な形をとって現れます。

耳鳴りとは

耳鳴りは、大元である脳本体の機能低下や、蝸牛神経(聞く神経)の機能低下によって発生していると言われています。
当然この場合、自律神経による調節機構には不具合が生じています。

それ以外にも、ヘルペスウイルスや細菌などによる蝸牛神経の障害を発端として耳鳴りが起きている場合もありますが、これも自律神経失調症と考えられます。

ストレスが過剰にかかり過ぎると、ストレスに抵抗するためにコルチゾールが多量に分泌されます。コルチゾールが大量に分泌されると免疫機能が低下するため、常在菌やウイルスに対しての抵抗力が弱くなってしまいます。

すると、菌やウイルスが活発に動き出し蝸牛神経に障害を与え、耳鳴りが発生してしまいます。

つまり、交感神経が強くなり過ぎて副交感神経の働きが弱くなったために、菌やウイルスに抵抗できずに耳鳴りが起こってしまったと言うことです。
このように、多かれ少なかれ自律神経と関わりのある耳鳴りについてさらに詳しくみていきましょう。

音の伝わる仕組み

耳鳴りのことを考える前に、人はどのようにして周りの音や話し声を聞くのか、音を聞く仕組みについて触れていきます。

物音であれ、人の話し声であれ、発せられた音という空気の振動は耳介によって集められ、そこから外耳道を通って集約された音が鼓膜を振動させます。
そして、鼓膜が振動すると、それに付着している耳小骨が振動を数十倍に増幅します。

その増幅された振動が蝸牛内のリンパ液を振動させ、その揺れを有毛細胞が感知して神経伝達物質が分泌されます。それによって蝸牛神経に電気信号が起こり、その信号は大脳へと伝達されます。
以上のようにして、色々な音が認識されるようになるのです。

身のまわりで起こった物音や話し声、身体の内部の音などが、耳という器官を通じて集約増幅され、電気信号へと変換されて脳での認識へと繋がっていきます。

音 → 耳 → 鼓膜 → 耳小骨 →蝸牛 → 蝸牛神経 → 脳幹 → 大脳聴覚野

つまり、その音の伝わっていく過程において、何らかの障害が発生するときに耳鳴りや難聴が引き起こされるということになります。
では、どこに障害が起こることで、耳鳴りが発生しているのでしょうか。

耳鳴りの起きる場所

  1. 外耳道
    耳垢ができたり、虫や髪の毛などの異物が外耳道に入りこみ、それが耳のなかで動くことによって音がします。 厳密に言うと耳鳴りではありませんが、その異物が取り除かれない限り音は発生します。

  2. 中耳
    鼓膜や耳小骨などの伝音系の器官において、風邪や中耳炎など何らかのトラブルが生じたときにも耳鳴りは発生します。音がこもる感じがする耳管狭窄症、音が響く感じの耳管開放症、低音や高音、もしくは音全体が聞こえにくい難聴などを伴うことも多いです。

  3. 内耳
    内耳の中でも聴覚系を司っている蝸牛において起きます。
    平衡系を司る前庭に近接しているため、めまいを併発することも多くあります。

  4. 蝸牛神経
    蝸牛神経においての炎症などによって引き起こされます。
    前庭神経に近接しているため、めまいを併発することが多いです。


  5. 電気信号は、蝸牛神経から感覚情報の中継地点である脳幹(延髄、中脳、視床)を経て、大脳聴覚野へと至ります。その情報をコントロールしている脳幹から大脳までのプロセスに、過剰な負荷がかかったり、何らかの障害が発生したときに耳鳴りが生じることがあります。

私たちの身のまわりでは、四方八方、さまざまな音が不協和音を奏でています。耳を澄ますと、エアコンや空気清浄器は送風時にダクト音を生み、時計は秒針を刻んでいます。テレビやコンポ、ラジオ等はBGMを流しており、外では車や電車が走行し、工事現場からは作業の音が聞こえてくるでしょう。

しかし、こうした音の氾濫した社会のなかで生活しているからといって、すべての音が聞こえているわけではありません。というよりも、聞こえている音のすべてを認識しているわけではないのです。すべての音を拾ってしまっては、情報過多に陥ってしまい、頭はパンク、それこそノイローゼになってもおかしくはないでしょう。

では、どのようにしてそうならないように対処しているのでしょうか。
結論を言うと、脳において音の分別作業が行われているからなのです。

音の分別作業

引越ししたばかりで、最初はやかましいと思っていた電車や車の通る音も、慣れてくるにしたがって、全く気にならなくなってきます。
時計の時を刻む音や、エアコンの音が常に気になったりすることも、そう多くはありません。
街中を歩いているからといって、雑踏のざわめきや人の話し声、車の走行音に悩まされることもないでしょう。

それはなぜなのででしょうか。
不要な音を脳が分別して拾わないようにしているからなのです。
必要な音だけを聞き取るように脳がコントロールしているからこそ、無用な情報過多にさらされることなく、円滑に生活を送ることができているのです。

れることなく、円滑に生活を送ることができているのです。 日常の中で、当たり前のようにしている音は、特に注意を向けなければ、意識されることはありません。人ごみの中での音や、空調、時計の音などがこれに類します。

また、日常生活の中でしてはいるが、決まって聞こえる音でないものもあります。
不意の物音や人の話し声、BGMなど常に聞こえているわけではないものもあるでしょう。
あるときには聞こえ、あるときには聞こえなかったりします。

基本的に聞こえる音で、自身が注意を向けて聞いているもの、相手の話、テレビ、音楽、タイマーの音、電話の着信音など。これらは、それぞれどのルートから入るかということが必ずしも決まっているわけではありません。

例えば、人の話を聞いていても、何かの拍子に別のことに気をとられ、聞いてませんでした、なんてことはよくあることでしょう。本来なら聞くべきである目覚ましの音なども、不本意ではあるが、雑音として処理されてしまい、当然この場合あとで大変な事態を引き起こすことになります。
ごくまれに、電話の呼び出し音も何かに夢中で気づかないこともあります。

このように、音がどのルートを通らなければならないと決まっているわけではないが故に、本来なら無視されるはずの音が聞こえてしまうことで耳鳴りが起こることもあります。
次に耳鳴りの原因となる疾患についてみていきましょう。

「耳鳴り」

  1. 耳鳴りとは...?
  2. 耳鳴りの原因