更新日:2018.07.19
執 筆:整体師 高木裕司
今回、私が栄養療法をテーマに選んだ理由は、実際、毎日のようにうつの患者さんとお話ししていると、かなりの割合で「この人の食生活悪いなぁ」と思うことが多々あり、それと同時に、医者からもらった薬でよくなっている人がほとんどいなくて、なぜ、薬を飲んでも良くならないのだろうか?と感じていたからです。
では、「うつの栄養療法」とはどんなことなんでしょうか?
簡単に説明すると「栄養の力を使ってセロトニンなどの脳内物質を補う」ということになります。
患者さんの中には「栄養だって~、医者から出される薬をいろいろ試してきたのに本当に栄養で良くなるの?」と思う方が多くいると思いますが、事実、うつに栄養療法は有効なのです。
それでは、なぜ薬では良くならないのに栄養で良くなるのでしょうか?
血液、骨、リンパ液、筋肉、臓器、人体のありとあらゆるものは食べた物の栄養で作られていることが誰でもすぐに分かると思いますが、うつで減少してしまうセロトニンなどの脳内物質も同様に栄養で作られているのです。
つまり、栄養療法とは、食事やサプリメントなどから特定の栄養素を摂ることで、減少してしまったセロトニンなどの脳内物質の生成を促す治療法を言うのです。
例えば、貧血なので血液の材料となる鉄分やたんぱく質を取る、骨粗しょう症改善させるためにカルシウムをたくさん摂るといったことと同じなのです。
現在のうつの治療では、薬を飲んで休むだけというのが主流のようですが、抗うつ剤(SSRI)などではセロトニンなどの脳内物質を薬の作用で補うだけで、根本的に脳内物質を増やすことが出来るわけではありません。
そのため、セロトニンが多く脳内に存在するうちは効果がありますが、セロトニンが枯渇してしまえば全く効果を示さなくなるのです。
しかし、栄養療法には伝達物質の生成自体を促すので薬物療法とは大きく異なるのです。
その意味では、薬は一時的な対症療法であるのに対して、栄養療法は根本的な治療と言えるでしょう。
現在、うつの原因はセロトニンやノルアドレナリンといった脳内物質の不足によって引き起こされると言われていますが、これを「モノアミン仮説」といいます。
しかし、それ以外にもドーパミンやアセチルコリン、メラトニンなどが関与していることもあり、単一の物質の動きだけを良くする事を対象としている薬では限界が出てくるのです。
次に、脳そのものにも焦点をあてたいと思います。
最新のうつの研究によって、うつの患者さんの脳には大きな問題が起こっていることがわかったのです。
一つ目は、「脳細胞の死滅=脳の委縮」という問題です。
東北大学の松沢博士は、うつ患者の海馬や扁桃体周辺の脳細胞が死滅していると指摘しており、PETという装置でうつの脳を視覚的に観察することでこの事実を発見しました。
海馬は記憶をコントロールする部位で、扁桃体は感情をコントロールする部位です。
恐怖とか不安、あるいは怒りや喜びなどを原始的でシンプルな感情に関与しているのがこの扁桃体ですので、
ということなのです。
人間は大きなストレスを受けると、血液中のコルチゾールが増加し、それが慢性的に続くと空間認知や学習能力を担う海馬に神経変性や細胞死を促す働きがあるのです。
コルチゾールとは副腎から分泌されるホルモンで、血糖値やイオンバランスをコントロールする作用があります。
コルチゾールはストレスによって過剰に分泌されることが分かっており、うつによる細胞の萎縮はこのコルチゾールが深く関わっているのです。
このことから、ストレスによって脳にダメージが与えられると言えるのです。
そのため、うつの対策としては、まずストレス量を減らし、過剰に分泌されるコルチゾールを抑えることが重要なのです。
うつの患者さんの脳では、深部辺縁系や前帯状回、基底核の働きが過剰になっている一方、新皮質の前頭葉では活動が低下していることが発見されました。
一般的には、うつの患者さんの脳では血流が悪くなっているとイメージされがちですが、実際はそうではなく、血流が低下している部位がある反面、他の部位では血流が多くなり、働きが過剰になるため、そのことで脳をうまくコントロールできなくなっているというのが真実なのです。
うつでは気持ちが落ち込むといった気分に関わる問題だけでなく、記憶力の低下、不眠、無気力、集中力の低下、頭が回らないといった能力に関わる問題も起こりますが、それは
というように複合的な問題が起こっていることが原因です。
脳に起こっている問題も人によって違うため、人によって抗うつ剤が効いたり効かなかったりするのです。
うつの原因と、栄養療法で治せる理由についてお分かりいただけたでしょうか。
このあとのページでは、うつと低コレステロールの関係や、血液検査の見方についてお伝えしていきます。
「うつは栄養療法で治せる」