顎関節症とは?【初心者向け】

顎の痛みや不具合が気になる方へ

顎関節症とは、顎(あご)やその周囲のいろいろな障害のことを指します。
例えば、顎がうまく開かない、あるいは閉まらないといった機能の問題や、顎の関節やその周囲の筋肉に痛みがある場合です。

これらの多くは、複数の原因から起こりますので、総合的なアプローチが必要となります。

では次に、「原因」についてお話しいたします。

原因

原因をまとめると、下記の8つになります。

  1. 下顎骨(顎の骨)の位置のずれ
  2. 咀嚼筋(ソシャクキン・噛む筋肉)の緊張やバランスの悪さ
  3. 自律神経のはたらきの乱れ
  4. 骨盤や背骨など、体のゆがみや姿勢の悪さ
  5. 噛み合せの悪さ
  6. 関節円盤のずれ
  7. 関節が変形。
  8. 関節包や靭帯のバランスの悪さ

厳密にいうと、顎関節症は上記8つの視点で考える必要がありますが、5~8は、1~4が悪化した場合になることが多いため、このページでは1~4について解説します。


  1. 下顎骨(顎の骨)の位置のずれ
  2. 咀嚼筋(ソシャクキン・噛む筋肉)のバランスの悪さ
  3. 自律神経のはたらきの乱れ
  4. 骨盤や背骨など、体のゆがみや姿勢の悪さ

では、この4つの原因をそれぞれご説明いたします。

1.下顎骨(顎の骨)の位置のずれ

下顎骨の位置がずれると、噛み合わせが悪くなり、顎に違和感を覚えたり痛みを感じたりすることがあります。また、それがストレスとなり脳もストレスを感じることになります。
下顎骨は顔面の骨にぶら下がっている状態なので、位置がずれる場合には必ず顎をぶら下げている咀嚼筋の緊張が原因となっています。それが、「2.咀嚼筋のバランスの悪さ」です。

2.咀嚼筋のバランスの悪さ

顎はブランコに似ています。ブランコの座る面が顎だと思ってください。そしてブランコをぶら下げている左右のチェーンやロープが咀嚼筋になります。
左右のチェーンの長さが違うブランコは、座る面が斜めになってしまいますよね。

つまり、咀嚼筋の左右の緊張のバランスが悪くなると、顎が斜めになってしまい、噛み合わせも悪くなります。

3.自律神経の働きの乱れ

何らかのストレスがかかると脳が緊張し、自律神経の働きが乱れます。咀嚼筋のコントロールには自律神経が深く関与していますので、脳にストレスがかかると咀嚼筋の緊張度が狂い、顎のバランスが悪くなります。

例えば、人間関係や仕事がうまくいかない、勉強が思うようにはかどらないなどのストレスもあれば、噛み合わせの悪さ、姿勢や体のゆがみなどのストレスもあります。

また、これらのストレスは咀嚼筋のバランスを悪くするだけでなく、血液の流れも悪くします。咀嚼筋も含めて体の筋肉は、酸素が足りなくなると痛みを感じるようになっています。

自律神経の働きが乱れて咀嚼筋に行く血流が悪くなると、咀嚼筋が酸素不足になり、痛みを感じるようになります。これが顎の痛みであることも非常に多いです。

4.骨盤や背骨など、姿勢や体のゆがみ

先程、姿勢や体のゆがみがあると、それが脳にストレスを与えて咀嚼筋のバランスが悪くなるとお伝えしました。しかし、姿勢や体のゆがみが顎に与える影響はもう一つあります。

それは、構造物としての影響です。構造物の基礎がゆがめばその上にあるものもゆがんできます。
これと同じように、姿勢や体のゆがみが顎に影響を与えてしまいます。

これら4つの原因は関連しあっており、原因が複数に絡むことが多いため、顎関節症を改善させるにはこれら全てに対してアプローチする必要があります。
また、これらが悪くなると、先ほどお伝えした5.噛み合せの悪さ・6.関節円盤のずれ・7.関節の変形・8.関節包や靭帯のバランスの悪さにつながります。

対策

分かりやすくするために原因を4つに絞りました。
次は、顎関節症の対策を下記の3つに絞ってお話ししていきます。

  1. 顎の使い方
  2. 体の使い方
  3. ストレスへの対応

1.顎の使い方

物を噛むときは、できるだけ左右の歯で同時に噛むようにしてください。 歯の治療をしていたり、顎が痛かったりするとできない時もありますので、できる範囲でやってください。

また、ほお杖も顎にストレスを与える姿勢ですので、できるだけ控えるようにしてください。

更に、次の「2.体の使い方」にも通じますが、食事をするときに横を向きながら噛まないようにして下さい。

例えば、左にテレビがあると、左を向きながら食事をしてしまいます。首と顎は連動していますので、首を曲げている状態で顎をたくさん使うと顎がゆがんできます。
ちなみに、左に向きながら噛むと顎は左にゆがんでいきます。そのため、テレビを見ながら食事するときは、できるだけテレビの正面に座るようにして下さい。

2.体の使い方

1.でお伝えした通り、顎は首と連動しているのですが、骨盤や背骨とも連動します。分かりやすい例でいうと、左の骨盤が上がっていると、左の顎は下がってきます。背骨が右にゆがむと左の顎が下がります。

では、左の骨盤が上がって背骨が左にゆがむと顎はどうなるのでしょうか?

この場合は、ケースバイケースになります。体が複雑にゆがんでいると顎も複雑にゆがみます。そのため、我々は顎関節症を施術する場合、顎だけではなく「体のゆがみ」という影響も考えながら行います。それぐらい体の使い方も重要なのです。

対策として、座るときや立つときに左右で体重を同じようにかけるようにすると、顎への負担は減ります。

また、首や肩周辺の筋肉の緊張は、顎に影響を与えます。
そのため、首や肩をゆっくりと大きく回す体操などを行い、首や肩周辺の筋肉を緩める必要があります。
しかし肩こりと違い、マッサージなどで緩めるよりも大きくゆっくりと首を動かす方が効果的です。なぜなら、筋肉を動かすと神経や脳が体中のバランスを取ろうとして働くからです。

3.ストレスへの対応

実はストレスがあると、食いしばりや歯ぎしりを行ってしまうこともあります。これが続くと顎やその周囲に負担がかかります。
食いしばりや歯ぎしりは就寝時に起こることが多いですが、実はそのような方は、日中でも無意識に顎の筋肉に力が入っていることが多いです。
そのため、日中の対策と就寝時の対策の二通りが必要になります。

●日中の対策
意識的に顎の力が抜けているかを確認するようにして下さい。
例えば付箋などに「顎の力を抜く」と書いて貼り付けておき、その付箋を目にしたときは、顎の力が抜けているかを確認するようにして下さい。
また、筋肉は緊張すると縮みますので、筋肉をストレッチさせるために30秒間大きく口を開け続けて下さい。この際、息を止めないようにして下さい。

●就寝時の対策
寝ている時に食いしばったり歯ぎしりをしたりするのは、実は「感情エネルギー」の放出のために行っています。
例えば、昼間に嫌なことがあり「怒り」を感じたけれども相手が上司なので、その「怒り」の感情を出せなかったとします。つまり「怒り」の感情エネルギーを抑え込んでいるのです。

「怒り」は意識的に抑え込んでいるので、無意識になる就寝時はその怒りが外に出てきてしまうのです。それが「食いしばり」や「歯ぎしり」となるのです。

つまり、日中に抑えこんだ「怒り」のエネルギーを、寝ている時出しているのです。これ自体は悪いことではないのですが、このようなことが続くと、顎が耐えられなくなって顎やその周囲に症状が出てきます。

そこで、この「怒り」の感情エネルギーを日中に意図的に出す必要があります。例えば、運動をしたりカラオケに行ったりしてエネルギーを使います。特に、食いしばりや歯ぎしりの場合は、大きな声を出すことがお勧めです。そのため、カラオケではうまく歌おうとするよりも大きな声を出すように歌うと良いでしょう。


これらの対策をしても十分に改善しない場合は、顎関節症の整体法を受けることをお勧めします。

顎関節症と「うつ・自律神経失調症」の関係

顎関節症とうつや自律神経失調症には深い関係があります。顎関節がゆがむと、頭蓋骨にゆがみの力が伝達されます。逆に頭蓋骨がゆがむと、顎にゆがみが出てきてしまいます。そして、頭蓋骨にゆがみがあると、自律神経失調症やうつになりやすいのです。

顎関節症と、虫歯ではない歯の痛み

まれに、「歯が痛くて、歯医者さんに行ったけど虫歯はないと言われた」という方がいらっしゃいます。これは顎が悪くなることにより、神経が誤操作を起こし虫歯のような痛みを感じてしまっていることが原因です。

歯が痛い場合は虫歯の可能性が一番多いので、まずは歯医者さんに行って下さい。しかし歯医者さんで虫歯ではないといわれたら、顎に問題があることが多いです。
原因は、三叉神経から分かれている「下歯槽神経」という神経が、顎周囲の筋肉や靭帯などに締め付けられたり、顎関節症により下歯槽神経に行っている血管が締め付けられたりすることが考えられます。まれに顎関節症でなくてもなる人がいます。